「スキャンセンターを資料回収の受け皿に据え、既存先の慣習をリセット ~ 現場を前裁きから解放する構造改革 ~」
目黒雅和税理士・行政書士事務所(みらいテラス税理士事務所:令和8年8月1日社名変更)様のケース

「既存先の運用ルールを変えられない」
多くの会計事務所が直面するこの課題は、放置すれば記帳代行の工数を増大させ、利益を圧迫し続ける大きな要因となります。2021年に「クラウドマスターCHALLENGE賞(※)」にノミネートされ、すでに高い業務効率化を実現されていた目黒雅和税理士・行政書士事務所様も、かつては同様の課題を抱えていました。
同社はこの着手が難しいとされる既存顧客の運用改革に、いかにして踏み切り、採算性の正常化を成し遂げたのか。所長自らによるトップダウンの交渉術から、現場の行動変容を促す細やかな仕組み作りまで、その実践的な舞台裏を伺いました。
※クラウドマスターCHALLENGE賞とは:マネーフォワード クラウド会計の習熟度を高め、顧問先への価値提供を実現される取り組みをされている事務所様に贈られる賞(2021年ノミネート事務所)
ステークホルダーが成長できる未来を見据え、今の環境を整えることで心理的安全性の高い組織を実現
ー 事務所のご紹介と、大切にされている文化についてお聞かせください。
目黒様、宮地様(以下敬称略):当事務所は2018年に創業し、現在は千葉県浦安市を拠点に20名弱の体制で運営しています。
組織の特徴は、税務担当と記帳チームがほぼ半数ずつという構成に加え、社内に「運用改善」を専門に担う少数精鋭のチームを配置している点にあります。また、社労士も在籍しており、バックオフィス業務をワンストップで支援できる体制を整えています。
私たちは「日々、1%の成長」を行動指針に掲げていますが、全員に画一的な成長スピードや一辺倒なキャリアを求めるわけではありません。テレワークなど柔軟な働き方を推進する一方で、日々の清掃活動や朝会といった「対話の機会」を大切にしています。一人ひとりの人生のフェーズを尊重し、「誰も置いていかない」という温かな文化を土台としながら、組織としての質を実直に高めていくことを心掛けています。
既存顧問先様の「記帳代行工数」が利益を圧迫。見えないコストの蓄積が課題に
ー 「スキャンセンター」導入前には、どのような業務課題があったのでしょうか。
宮地:既存の顧問先様ほどこれまでの慣習が根付いているため、窓口の監査担当者から運用変更を促すことへの心理的ハードルが高いという課題がありました。新規のお客様には最初から理想的なルールを提示できますが、既存のお客様に対しては「今まで通りで大丈夫です」と妥協してしまいがちだったのです。
その結果、一部顧問先様において、提出期限が守られない、証憑が整理されずバラバラに届く、後出しの資料が発生するといった事態が常態化する状況が続いていました。他にもこれらに伴うチェックや手戻り、催促といった「見えない工数」が積み重なり、気づけば本来注力したい税務業務にリソースを割けないだけでなく、事務所の採算も大きく圧迫していました。
目黒:見えない工数は積もり積もって、職員の日々の日報に工数としても現れていましたので、私からは「職員にもPL(損益)意識」を持ってほしいと所内全体に伝えました。ただ、そこで、現場任せに行動改善を促すのではなく、私自らが先頭に立って顧問先様へ運用の変更を提案し、組織としてこの課題に向き合う姿勢を見せるようにしました。
データに基づく「トップダウン交渉」で、感情ではなく事実で納得いただく
ー 既存顧問先様への提案を成功させるためのポイントはどこにありましたか?
目黒:最大の山場は、やはりお客様に「これまでのやり方を変えてもらう」ことでした。ここは非常にデリケートな部分ですから、現場の担当者に丸投げするのではなく、私自身がトップダウンで介入すると決めました。その際、何よりも意識したのは、「お願い」という感情に頼るのではなく、「対応工数」という動かしようのない事実を交渉材料にすることです。
具体的には、まず顧問先様ごとの実工数を徹底的に分析し、どの業務がどれほど負荷になっているのか、その根拠をすべて可視化しました。そのうえで、「運用ルールの変更を許容いただくか」それとも「現状の工数に見合った報酬へ調整いただくか」という、二者択一の見直しを打診したのです。
もちろん、単に条件を突きつけるわけではありません。経営のパートナーとして、この運用が、お客様自身の「早期月次決算」や「迅速な経営判断」のためにいかに不可欠であるかを、論理立てて誠実にお伝えするよう心掛けました。
日頃から丁寧な仕事を通じて信頼関係を築いてきた自負があったからこそ、私自身も自信を持って提案できましたし、お客様にもその想いが真っ直ぐに届いたのだと感じています。結果として、多くのお客様に納得いただけて、「既存先だから」という例外をなくし、事務所の採算設計を本来あるべき姿へと正常化することができました。
「3ヶ月の集中教育」と「視覚的な刷新」で、新運用を組織の「型」へ
ー 運用ルールを変更することを決めた後、新運用を定着させるための秘訣は何でしょうか。
目黒・宮地:運用は「決めた瞬間」ではなく「回り始めてから」が本番です。私たちは、新ルールを定着させるために「ソフト」と「ハード」の両面からアプローチしました。
まずソフト面では、変化に伴うコストを最初の3ヶ月に集中させる「教育期間」を設計しました。
1ヶ月目は提出方法や分類などの「型」を徹底し、2ヶ月目で例外対応を排除して「標準化」を図る。そして3ヶ月目で、顧問先様が自走して事務所を介さず「スキャンセンターへ資料を直送」できる状態まで導く仕組みです。この3ステップを段階的に踏むことで、変更直後に起きがちな「結局、元のやり方に戻ってしまう」という手戻りを防ぎました。
これと同時に、ハード面として着手したのが「物理的なツールの刷新」です。運用改革は、正論を掲げるだけでは浸透しません。そこで私たちは、視覚的に「ルールが変わったこと」を示すため、提出用キットをフルリニューアルしました。
具体的には、従来の「何でも投げ込みOK」だった運用を象徴する「黒ファイル」を廃止し、スキャンセンター対応の整理された運用を体現する「緑ファイル」へと移行したのです。「何を・どう分けて・どう送るか」が一目でわかるキットへと作り変えたことで、仕分けのルール自体が極限までシンプルとなり、単なる備品変更以上の効果がありました。
結果、顧問先様と職員双方にとって、「緑のファイルが届いたら、新しいルール(直送)で進めるんだ」という強力な視覚的スイッチとなり、現場の判断基準を一気に揃える起点となりました。

※スキャンセンター送付専用の緑ファイル
利益率の向上と、リモート体制を支える心理的安全性
ー 一連の改革を経て、どのような効果を実感されていますか。
目黒:大きく分けて3つの成果がありましたが、どれも事務所の体質を根本から変えるものでした。
まず、管理部門の負担が削減されたことです。ルールが標準化されたことで、これまで多くの時間を奪っていたイレギュラー対応や、不毛な確認作業が目に見えて減りました。「誰がどの仕事を抱えているか分からない」といったブラックボックス化が解消され、進捗がクリアに把握できるようになったのは大きな変化です。
それに伴い、事務所全体の利益率も改善しました。例外対応という「利益を生まない時間」が削ぎ落とされたことで、スタッフの実稼働がそのままダイレクトに利益へと直結する、非常に筋肉質な構造に生まれ変わったと感じています。
そして、これが最大の収穫かもしれませんが、現場の「心理的安全性」が格段に高まったことです。ルールが明確になったことで、スタッフは「この基準さえ守れば正解なんだ」という確かな安心感を持って業務に当たれるようになりました。個人の頑張りや我慢に依存せず、リモート環境下でもチーム全体でスムーズに運用を回せる体制が整ったことは、今後の組織拡大においても大きな自信になっています。
運用改革を土台に、付加価値を最大化する「総合型ソリューション事務所」へ
ー 最後に今後の展望をお知らせください。
目黒:私たちにとって、今回の運用改革は決して「ゴール」ではありません。あくまで「ステークホルダーが成長できる未来」を実現するための、強固な土台作りがようやく整ってきた、という認識です。
今後はさらなる事務所規模の拡大を予定していますが、単に人数を増やすだけの組織にはしたくありません。一貫性のある仕組みと最新のツールを高度に組み合わせ、どこまでも「筋肉質な経営」を追求していきたいと考えています。そのために、現在は4つの大きな柱を軸に進化を急いでいます。
まず取り組んでいるのが、「多様な働き方と規模拡大の両立」です。ペーパーレス化を徹底することで、フルリモートを含めた柔軟な働き方を維持しながら、組織としてのキャパシティを確実に広げていきます。
また、「製販分離による専門性の高度化」も欠かせません。「会計」という製造プロセスと、「税務・コンサルティング」という販売プロセスを明確に切り分ける構想を具現化し、スタッフ全員がより専門性の高い、代わりのきかない業務に集中できる環境を整えます。
こうした仕組み化によって、記帳代行の工数は最小限に抑えられます。そこで生み出された貴重な時間を、「付加価値の高い業務へのシフト」へと繋げていく。お客様の経営を真に支援するコンサルティングや、一歩踏み込んだ提案に全力を注ぎたいと考えています。
最終的には、単なる税務の枠を超え、お客様のあらゆる経営課題を解決する「総合型ソリューション事務所」としてのブランドを確立することが目標です。
「今の環境を整えることで、未来の成長を確かなものにする」。この思想を胸に、これからも変化を恐れることなく、一歩ずつ事務所運営を磨き続けていきたいですね。
目黒雅和税理士・行政書士事務所(みらいテラス税理士事務所:令和8年8月1日社名変更)目黒 様/宮地 様
業種:スキャンセンター
所在地:千葉県浦安市当代島1丁目16番21号 フェニックス2階
サイト:https://megutax.jp/office/
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